1. 新しい腱縫合法を、平成8年度の科学研究奨励研究A補助金を用いて開発し、屍体腱にてその有用性を確認していた。今回、生犬を用いて腱縫合法を実際に行いこの組織学的、生体力学的評価をおこなった.後療法に自動運動療法を適応すると、肉眼的にまた生体力学的にも良好な腱の治癒が観察された.ここまでは、従来法による縫合と他動運動療法による治癒においても観察されていたことであったが、更に興味ある知見を今回の研究にて得ることが出来た。組織学的に検討すると従来観察されていたepitenon優位の治癒を示さず、endotenon優位の治癒が行われたことである.この知見は、いままで殆ど報告がなかったもので、1999年2月1日に開催されたアメリカ整形外科基礎学会で口演発表し、専門領域の識者の評価を得た.要旨はJounal of Bone and Joint Surgeryの1999年版に掲載される予定である.また、この内容を論文形式にまとめて、専門英文雑誌に投稿する準備を進めている。 2. 1.をうけて、自動運動療法を行った場合のendotenonの活動性に着目して更に組織学的検討を加えている段階である. 3. 縫合糸に生体親和性のある吸収糸を用いた研究では、従来の化学繊維による縫合糸と比べて炎症反応は増加するものの十分に術後自動運動の後療法に耐えられる知見を得た.これまで、吸収糸による縫合法の成功例は報告されていないので、新知見であるが、まだ、組織学的な評価の段階でこれから検体数を増やして生体力学的評価を加えて、データに更に客観性をもたせて公表する予定である。 3. 腱組織の治癒課程における血管新生の検討に関しては、腫瘍の評価に開発してきた手法が、そのまま腱治癒においては、適応できないことが判明した。これは、腱内に新生する血管が予想よりも遥かに微細であり、免疫染色にて染色されないためである。現在、あたらな評価法を模索中である。
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