研究概要 |
前回我々は,変形性膝関節症における高位脛骨骨切り術後の再生軟骨における成長因子IGF-1の発現とその調節について内固定抜去時の再生軟骨組織を用いて免疫組織化学的染色 in situ Hybridization 法により組織学的に観察し,再生軟骨におけるIGF-1の産生と発現を確認した.現在はTGF-βの発現と調節を同じく免疫組織化学的に調査している. IGF-1は単独遊離状態で存在せず,その結合蛋白(IGFBP)と結合した状態で存在しているといわれている.IGFBPは6種類の存在が報告されておりそれぞれIGF-1による軟骨の再生を促進,または抑制する作用を持つ.各結合蛋白とIGF-1の関連性を調査するため,現在家兎の大腿骨関節面関節軟骨全層欠損モデルを作成し,関節液や再生軟骨における各IGFBPの発現の過程を添加後2,4,8,12週において組織標本と関節液採取し,各染色法やELISA法により関節軟骨再生の過程とIGF-1とIGFBPとの関連を調査している. 現在手術後約4週目のモデルより組織を採取し,標本作成中である. また同じく成熟日本家兎を用いて関節軟骨全層欠損モデルを作成し,自家骨膜細胞の移植を行い,関節軟骨の形成能を調査している.脛骨より骨膜細胞を採取し,0.5%コラゲナーゼ細胞を単離培養し,大腿骨関節面の欠損部へ移植する事により,関節軟骨特に硝子軟骨様組織の形成過程を観察している.コントロール群,培養細胞のみの移植群,培養細胞に成長因子IGF-1またはTGF-βを添加した群などに分け,移植後2,4,8,12週において組織標本を採取しトルイジンブルー,サフラニンOなどによる組織化学的検討,免疫組織化学的染色によるTGF-β発現と局在の確認または2型コラーゲン,プロテオグリカンコア蛋白に対するnorthern blottingを施行し,軟骨基質の発現を比較する予定である.現在各群の組織標本を採取し加工中である.今後は引き続き組織学的検討を続行予定である.
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