研究概要 |
グリオスタチンは、神経栄養因子活性や血管新生活性をもつことが知られている.申請者は,慢性関節リウマチ(RA)の滑液の細胞生物学性質を調べる過程で,RA滑液中にこのグリオスタチンが大量に存在することを見いだし(K.Asai,T.Otsuka et al.Clin.Chim.Acta 218,1-4,1993),さらにグリオスタチンのRA病態マーカーとしての有用性を確認した(Y.Waguri et al.Br.J.Rheumatol36,315-321,1997). そこで平成10年度はまずグリオスタチンの滑膜炎発症作用をin vivoにて検討するために必要な大量のグリオスタチンを精製した.グリオスタチンcDNAを組み込んだ発現ベクター(pET-His)をE.Coliにトランスフェクトしグリオスタチンを発現させ,グリオスタチン組換体を調製した.E.Coli由来のLPSを除去するため,ポリミキシンBを用いた.こうして得られたグリオスタチン組換体を雌日本白色ウサギの膝関節腔内に注入し,膝滑膜を組織学的に検討した.10μg/週,4週間投与群では滑膜への単核球,好中球などの炎症細胞浸潤があり,滑膜表層細胞の肥厚と微小血管増生が認められた.20μg/週、4週間投与群ではさらに炎症細胞浸潤が著明となり,間質の浮腫も亢進した.10μg/週、3ヵ月投与群ではリンパ球集簇さらに胚中心を伴ったリンパ濾胞形成も認められ,絨毛状滑膜を呈したものもあった.滑膜表層細胞の肥厚と微小血管増生は,短期投与群と比べて増強していた. またGLS分子の起炎活性フラグメントの同定のために,GLSおよびミュータント蛋白の一次構造で,実験的関節炎をひきおこす活性を担う活性フラグメントをdeletion mutantsの手法を用いて作製にとりかかっている.
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