研究概要 |
本研究では,まず第1に末梢神経損傷時における神経栄養因子受容体の発現を経時的に検索した。ラットの坐骨神経を圧挫損傷し1,3,7,14日目に4%パラフォルムアルデヒドで固定した。坐骨神経,L4,5レベルの後根神経節,脊髄を摘出し,各神経栄養因子受容体の分布を免疫組織化学的染色法を用いて検討した。その結果NGF受容体であるTrk Aは損傷坐骨神経のシュワン細胞だけでなく脊髄神経の前角細胞周囲の神経膠細胞に発現しており,末梢神経損傷時における中枢神経系の重要性が明らかとなった。またBDNF受容体であるTrk Bは主に運動神経に分布し,損傷後3日目から7日目にかけて強く発現していることが確認できた。次に神経損傷前後での遺伝子発現の経時的変化を比較検討するために,同様にラット坐骨神経に圧挫損傷を加えた後,1,3,5,7日目のRLCSプロファイルを作製した。千数百の遺伝子に対しスクリーニングを行い,変動する遺伝子を検索した。その結果,変動する遺伝子は30個存在していた。またその数は,神経損傷後5日目に最も多い事が明らかとなった。変動していた遺伝子のうち4個の遺伝子のクローニングとその塩基配列を決定したところ,そのうち3個はcathepsin S,mithochondrial phosphate symporter,uridine monophosphate kinaseであった。これらの遺伝子と神経再生機構との関連についてこれまで報告はなく,新たな知見が得られた。また残りの1つは新規遺伝子であり,この遺伝子機能解析を実験計画に沿って進めていくと共に残りの発現変動する遺伝子のクローニングを行う予定である。以上のように本研究では末梢神経再生修復時に発現誘導される既知,未知の分子定量を行っている。
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