研究概要 |
本研究では、まず末梢神経損傷後の神経細胞における遺伝子発現状態について、RLCS法を用い経時的に観察した。ラット坐骨神経に圧挫損傷を加えた後、1,3,5,7日目の脊髄前角領域を採取しRLCSプロファイルを作製後、未処理ラット脊髄前角領域のRLCSプロファイルと比較検討した。全1991種の遺伝子に対し、37種の遺伝子が変動していた。変動率は1.9%であった。これら37種の遺伝子の経時的変動パターンは23種類に分類された。これらのパターンは、「持続性発現亢進パターン」「一過性発現亢進パターン」「発現低下パターン」の3種類に大別された。発現変動する遺伝子のうち約6割が一過性に発動誘導されるものであり、このことは末梢神経損傷後、神経細胞で神経再生分子機構が複雑に制御されることを反映するものと考えた。さらに発現変動する遺伝子のクローニングとその塩基配列の決定を試み、一過性に発現変動する遺伝子としてuridine kinase遺伝子のラットホモログを同定した。今回、末梢神経損傷後7日目にこの遺伝子の発現が誘導されることを初めて見いだした。
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