研究課題/領域番号 |
10470312
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 重仁 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30143176)
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研究分担者 |
大久保 直光 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (20223761)
宮部 雅幸 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (60145589)
岩本 竜明 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助手 (70303568)
中島 芳樹 浜松医科大学, 医学部, 助手 (00252198)
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キーワード | 出血性ショック / 一酸化窒素 / 一酸化窒素放出剤 / ノルアドレナリン / 血管反応性 |
研究概要 |
出血性ショック(HS)中にNOドナー(SNAP)を投与し、血行動態の観察、ノルアドレナリン(NA)に対する血管反応性を検討した。方法:雑種成犬を麻酔後、気管内挿管し人工呼吸とした。ペントバルビタール3mg/kg/時で麻酔維持し、大腿動・静脈に脱血用カテーテルおよびSGカテーテルを留置した。脱血で平均動脈圧(MAP)が40mmHgの状態を1時間維持し、3群に分けて治療し、ショック導入2時間後に返血した。輸液は乳酸加リンゲル液20ml/kg/時とした。I群:HS+生食(コントロール群 N=7)、II群:HS+SNAP(SNAP投与群 N=7)、III群:シャムHS+SNAP(シャムコントロール群 N=6)。SNAPの投与量は5mcg/Kg/10分の負荷量投与後、5mcg/Kg/時で持続投与を行った。返血後のpHは重曹で補正し、pH7.25以上を目標とした。検討項目として、循環動態、血清カテコラミン(CA),NOx、NAテスト。結果:脱血量は1,11群で差がなかったが、SNAP投与群の生存率(100%)は生食投与群(57%)より高値であった。SNAP投与群では、HS中の血行動態を改善、HS後のNAテストを改善、アシドーシスの進行阻止、CAの上昇抑制をみた。NOxの変化は全群で正常範囲内に留まった。考察:HS初期にNOは上昇する。これはecNOSからである。HS,が遷延するとiNOSが活性化され、NOがさらに上昇し、種々の細胞毒性物質が出現する。これは1-5時間以降であるとされる。in vitroでSNAPを投与するとiNOSの活性が抑制されることが知られている。本研究の結果は同じメカニズムがHSの病態に効果的に作用したものと思われる。しかし、NOxの上昇がないことから、外因性NOの血小板や多核顆粒球の血管内皮粘着抑制作用によるのかも知れない。NAテストがSNAP投与群で保たれた。血管反応性がHS後に鈍化することは知られ、NAに対する反応性の変化にNOが関与すると報告されている。NOドナーの投与がecNOSからのNO過剰生産を抑えたか、あるいは血管平滑筋細胞内に誘導されるiNOSの誘導を抑制し、血管の反応性が保たれたものと推測される。
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