研究概要 |
本年は、新生ラット摘出脊髄標本を用いた電気生理学的実験を行い、pituitary adenylate cyclase activatin gpolypeptide(PACAP)の侵害反射電位への関与の可能性を検討した。 生後1-3日のラットを麻酔下に断頭、下位胸髄以下を第3,4,5腰髄前後根を残したまま摘出、半切し、人工脊髄液にて潅流した。吸引電極にて後根を電気刺激し、同側同髄節の前根から細胞外記録を行った。同様に、脊髄・末梢神経(伏在神経)及び皮膚が機能的に連絡した標本を作製し、第3腰髄前根から細胞外記録を行った。 PACAP type1受容体の拮抗薬であるM65(0.1-1μM)は、濃度依存性に後根電気刺激による侵害反射電位を抑制した。また、摘出脊髄-末梢神経-皮膚標本では皮膚にC-線維の選択的刺激薬であるカプサイシンを適用して起こる侵害反射電位□◇M65 1μMにて抑制された。さらに、PACAP38(10-500nM)を脊髄に潅流適用すると数十秒持続する時間経過の緩徐な前根脱分極反応を誘発し□Aこの反応はM65(0.3-1μM)により抑制された。 このような事実より、PACAPは新生ラット脊髄において侵害刺激によりC-線維が活性化して誘発される前根脱分極に関与するペプチド性神経伝達物質であることが示唆された。 この事実をさらに確認するために、新生ラットにおけるPACAPの存在部位を、組織免疫染色を用いて確認した。この結果、PACAPは、後根神経節・脊髄後角に存在することが確認できた。以上のことより、PACAPが侵害刺激伝達に深く関わっていることが示唆された。
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