1)電気生理学的検討 : 選択的なPAC1受容体の作動薬であるMaxadilanとPAC1受容体の拮抗薬であるMax.d.4及びPACAP(6-38)を用いて、新生児ラット摘出脊髄を用いた電気生理学的方法によりPAC1受容体の役割を検討した。Maxadilanにより投与量依存性に前根から長期に持続する脱分極が記録された。L3-L5の後根を刺激し、前根から記録するslow ventral root potential (slow VRP)は、Max.d.4及びPACAP(6-38)により投与量依存性に抑制された。また後根にその支配領域の皮膚をつけて作成した標本を用いた検討では、皮膚をC-fiberを選択的に刺激するcapsaicinで刺激したときの前根の反応を、Max.d.4は投与量依存性に抑制した。以上のことから、PAC1受容体は、脊髄後角において侵害刺激伝達を担う受容体であることが分かった。 2)行動学的検討及び形態学的検討 : ORL1の内因性作動薬であるnociceptinの髄腔内投与による効果と、脊髄後角におけるFos蛋白の発現を検討した。フォルマリンテストを用いた検討では、nociceptin 30μgを髄腔内投与すると、morphine 1μg髄腔内投与と同程度の鎮痛効果を示し、また同程度に脊髄後角第I-II層のFos蛋白の発現を抑制した。坐骨神経部分結紮モデルと絞扼性損傷モデルを用いた検討では、nociceptin 30μgを神経損傷前に髄腔内投与すると、絞扼性神経損傷モデルではthermal hyperalgesiaの発症が抑制され、脊髄後角第I-II層のFos蛋白の発現を抑制したが、部分神経損傷モデルではthermal hyperalgesiaの発症も変わらずFos蛋白の発現にも影響しなかった。
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