研究課題/領域番号 |
10470318
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石川 敏三 山口大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (90034991)
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研究分担者 |
塚原 正人 山口大学, 医療技術短期大学部, 教授 (20136188)
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
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キーワード | 神経因性疼痛 / 神経可塑性 / 脊髄グルタメート / c-fos発現 / アポトーシス / 介在ニューロン死 / 栄養因子治療 |
研究概要 |
11年度は、ラットニューロパチックペインモデルにおいて、1)脊髄神経系の神経可塑性における分子生物学的機序の確認、および2)治療応用の検討を行った。 雄SDラットを用い、左坐骨神経絞扼モデルを作成した。また、大槽よりITにループ型マイクロダイアリシスプローベを挿入し(先端が腰髄1-2レベル)、透析液のglutamate濃度をHPLC法で測定した。絞扼術前、後3、5、8、10日目における熱刺激に対する反応(ホットボックス)を観察し、5および10日目に灌流固定を行い、脊髄を摘出したのち、免疫組織学的評価(c-fos蛋白、TUNEL染色、HE染色)を行った。この実験において、治療として、それぞれ(1)N-type Ca channel Blocker(IT)、(2)5-HT2A Blocker(I.P.)、(3)4-methyl cathecol(4-MC,I.P.)を投与し、その効果を評価した。 その結果、1)坐骨神経絞扼により、熱性知覚過敏が起き脊髄glutamate放出が経日的に増加し、症状の初期状態で脊髄表層においてc-fos蛋白の誘導と小型細胞のアポトーシスが見られ、遅発生に(10日)介在ニューロンの壊死が認められた。したがって、glutamate神経の過剰興奮が脊髄神経可塑性を誘因し、遺伝子発現やアポトーシスを引き起こし障害が発現するものと考えられる。その後、介在ニューロンが壊死すると脊髄神経系の調節機構が消失し、症状が慢性化するものと示唆される。2)治療法では、(1)脊髄へのN-type Ca channel Blocker投与は、脊髄glutamate放出の抑制を始め、これらの測定項目を有意に抑制した。(2)末梢5-HT2A Blocker投与は、これらの項目は軽度に抑制した。また、(3)神経成長因子の合成誘導をもたらす4-MCの末梢投与は、脊髄glutamate放出の抑制を始め、これらの測定項目を軽微ながら有意に抑制することが判明した。
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