研究概要 |
肺におけるNMDA受容体の存在は、Saidらにより1996年示唆された。しかし、その後肺におけるNMDA受容体の存在を分子生物学的に示す報告はでていない。平成10年度の我々の目標は、分子生物学的にその存在を明らかにすることであった。 1. reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)により、ラットの肺、気管気管支におけるNMDA受容体のmessenger RNAの存在を検討した。NMDA受容体のチャンネルサブユニットであるNR2C,NR2Dが肺に、気管気管支にはNR2Dが存在することを再確認した。しかし、中枢神経系でNR2の機能発現に必要とされるNR1は確認されなかった。 2. ノーザンブロット法によるNMDA受容体のmRNAの確認:ラットの肺、気管気管支をエーテル深麻酔下に摘出、ただちにTRIZolに入れRNAの分解を防いだ。total RNAを抽出し、ノーザンブロット法によりNMDA受容体のどのサブユニットのmRNAが発現しているかを調べた。通常使用される20,30,40,50,100μgのtotal RNAではそれらの発現は確認できなかった。これはmRNAの発現量が非常に少ないためと考えた。そこでmRNAをカラムで精製し、これでノーザンブロット法を行ったところ、2,5μgのmRNAでNR2CmRNAが肺のみで確認された。 3. 肺、気管気管支に存在するNMDA受容体のサブユニットのmRNAは量的に非常に少なかった。このため今年度に予定していたNMDA受容体mRNA発現細胞の確認はできなかった。 4. これまでの成績は、1999年4月にWashington,DCでおこなわれるExperimental Biology99にて発表する。
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