研究概要 |
平成10年度は,脳のスライス標本で,脳実質内の抵抗血管径の変化を薬理学的に検討するためのマイクロベッセルビデオシステムを開発した. 1) ウイスターKyotoラットに,ハロタン(1-2%)を吸入させ十分な麻酔深度をえた後,大腿動脈に24Gカテーテルを留置,圧トランスデューサに接続して血圧測定(ハロタン1%吸入下)を行った.ついで,胸骨を正中切開し,左心室にクレブス液(20ml)を注入すると同時に,右心房に18G注射針を刺入し脱血死させた.速やかに脳を摘出し,あらかじめO_295%+CO_25%で通気し4℃に冷却したクレブス液中に浸した. 2) 摘出した脳をスライサーを用いて,前頂の後方およそ3mmの位置で,新皮質および海馬を含む冠状の脳スライス標本(厚さ約250μm)を作成した.この標本を,O_295%+CO_25%で通気したクレブス液で満たした,保温機能(37℃)付きの観察用チャンバー(回路内容量10ml)に入れ,顕微鏡(対物40倍,接眼2.25倍)で脳実質内動脈(径10-30μm)を観察した.動脈径をビデオカメラに接続したディメンションアナライザ一で測定し,ビデオテープおよび記録用紙に記録した. 3) 脳スライス標本を,プロスタグランディンF_2α(5×10^<-7>M)で収縮させ,ハロタン(0,0.5,1,2MAC)を通気ガスに付加して,ハロタンによる脳実質内動脈拡張作用を観察した. 今後は,血管内皮機能を一酸化窒素合成酵素阻害薬で抑制したうえで,電位依存性カルシウムチャネル阻害薬ニフェジピン,カルシウム依存性カリウムチャネル阻害薬イベリオトキシン,カルシウムで誘発される筋小胞体からのカルシウム遊離の阻害薬リアノジン,カルシウムATPase阻害薬サプシガルジンなどの処置を行い,イオンチャネルおよびイオンポンプのカルシウム濃度調節機構における役割の差とそれに及ぼすハロタンの影響を明らかにする予定である.
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