研究概要 |
平成11年度は,マイクロベッセルビデオシステムで,平滑筋のカルシウム濃度を低下させることにより血管弛緩反応を引き起こす薬剤に対する脳実質内の抵抗血管径の変化を薬理学的に検討した. 1)ウイスターラットの脳を摘出し,スライサーを用いて,前頂の後方およそ3mmの位置で,新皮質および海馬を含む冠状の脳スライス標本(厚さ約250μm)を作成した.この標本を,O_295%+CO_25%で通気したクレブス液で満たした,保温機能(37℃)付きの観察用チャンバー(回路内容量10ml)に入れ,顕微鏡(対物40倍,接眼2.25倍)で脳実質内動脈(径10-30μm)を観察した.動脈径をビデオカメラに接続したディメンションアナライザーで測定し,ビデオテープおよび記録用紙に記録した. 2)脳スライス標本中の血管を,プロスタグランジディンF_<2α>(5×10^<-7>M)で収縮させ,ATP感受性カリウムチャネル開口薬レブクロマカリムを累積投与した.レブクロマカリムに対する血管弛緩反応は比較的緩徐であり、また本研究で用いているマイクロベッセルビデオシステムでは,30分以上の連続した血管径の観察は比較的困難であることから,至適投与濃度を決定するのに時間を要した.結果的に,現段階では,2×10^<-7>Mと5×10^<-7>Mの二種類の濃度を使用することにした.また,生理的なATP感受性カリウムチャネル開口薬であるcalcitonin gene-related peptide(CGRP)も使用し,こちらは至適投与濃度が10^<-9>Mと10^<-8>Mであることを明らかにした.さらに,これらのATP感受性カリウムチャネル開口薬による血管弛緩反応が,ATP感受性カリウムチャネル拮抗薬であるグリベンクラミドで抑制されることも明らかとなった. 今後は,ハロタン(0.5,1MAC)を通気ガスに付加して,ハロタンが以上の血管弛緩反応に影響する否かを検討すると同時に,カルシウム依存性カリウムチャネル阻害薬イベリオトキシンなどの処置を行い,脳微小管における,イオンチャネルおよびイオンポンプのカルシウム濃度調節機構における役割の差とそれに及ぼすハロタンの影響を明らかにする予定である.
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