研究概要 |
研究者らは麻酔薬が一酸化窒素(NO)を介し、全身性炎症反応の重要な第一段階である白血球と血管内皮細胞接着反応を惹起し、組織障害の素因をつくる可能性を示した(Anesthesiology87:591-8,1997)。本研究では第2のガス状メディエーターとして注目されている一酸化炭素(CO)とその産生酵素ヘムオキシゲナーゼを介する機序が細胞接着反応に関与している機構を解明し、麻酔薬惹起性の細胞接着反応をどのように修飾するか検討する。初年度(平成10年度)はまず白血球接着反応にも影響し、麻酔薬との相互作用が指摘されている血小板の動態を白血球と共に検討した。血小板の描出には蛍光色素(CDSF)を用いハイスピードカメラにより解析した。これまでにi)内毒素で惹起される血小板凝集と白血球接着反応はヘミン腹腔内投与によるヘムオキシゲナーゼ誘導により抑制される、ii)ヘムオキシゲナーゼ阻害ジンクプロトポルフィリン処理によりその血小板凝集と白血球接着は再び惹起される、iii)ヘム代謝産物ビリルビンはこの接着凝集反応を強く抑制する、iv)ガス状メディエーターCOはこの接着凝集反応を部分的に抑制することが現在までに判明した。これは、高ビリルビン血症では白血球接着ならびに血小板凝集が抑制される可能性を示唆している。以上の結果をもとに、次年度は吸入麻酔薬が惹起する細胞接着と血小板凝集反応にガス状メディエーターCOとヘムオキシゲナーゼを介する機序がどのように関与しているか検討する。
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