研究概要 |
閉塞性腎症や逆流性腎症では原疾患の消失後にも腎障害が進展し、その中心は腎尿細管間質病変である。何故尿細管間質障害が進展するのかを解明するため、瘢痕部の新生血管の役割に着目して検討した。 高度腎瘢痕のため摘出された逆流腎および閉塞腎組織を用いて組織学的検討を行った。間質の線維化が高度な瘢痕部ではCD34,endogrinの発現が増加しており、血管新生が増強されることが確認された。同部位には血管増殖因子(PD-ECGF,bFGF,VEGF)の発現増加が認められる一方、血管増殖抑制因子(thrombospondin-1)の発現は低下しており、腎尿細管間質障害の進展過程には血管新生が重要な役割を演じることが明らかとなった。血管新生因子の産生細胞はPD-ECGFの免疫組織学的検討により、瘢痕部の間質に出現するT cells,macrophageあるいは傷害され虚血に陥った尿細管細胞であることが明らかとなり、同様に瘢痕部nephronに発現するreninを介したrenin-angiotensin系の賦活、TGF-βなどの組織障害性のcytokinesの発現増強などとともに、瘢痕部周囲の尿細管間質へと障害を拡大進展させていくものと考えられた。臨床例の小児原発性膀胱尿管逆流症における検討では、(1)尿中の内皮細胞増殖因子(VEGF)は血清creatinine、尿α1-microglobulin、尿 albumin、DMSA renal uptakeと有意な相関が認められ、両側に高度腎瘢痕を認める例で異常高値を示し、腎障害の進行や蛋白尿の増加と相関した。(2)尿IL-6は血清Cr,β 2m,α1m、尿albumin、DMSA renal uptakeと良い相関を示し、腎組織の免疫組織学的検討では、瘢痕部に近接した近位尿細管細胞に強い発現が確認された。(3)T cell活性化の指標である血清soluble IL-2 receptorも両側に高度腎瘢痕を認める症例では増加が認められた。これら血中・尿中の指標を組み合わせて評価すれば、臨床例においてかなり正確に腎尿細管間質障害の進展の段階や程度、腎機能の予後を把握できると思われる。なお、以上の結果を論文とし報告した。
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