研究概要 |
ヒト腎癌では腫瘍の大きさ、占拠部位とは無関係に副腎に転移することがある。またヒト肺腺癌では肺以外のもっとも多い転移部位に副腎組織が認められる。これらの転移機序に関しては現在まで、解剖学的(副腎の血管のsinusoid構造、単位重量あたりの豊富な血流等)なメカニズムしか研究されていない。 今回、肺転移関連分子:ガラクトシルグロボシド系糖鎖(DSGG,MSGG)の発現パターンの違うヒト腎癌細胞の樹立を試みるとともに、これらの細胞、および同糖鎖抗原の発現を認めるヒト肺癌由来細胞を用いて、ヒト肺組織、ヒト副腎組織との接着能をstamper-woodruff assayを用いて検討を行った。また、DSGG強発現の腎癌細胞に関しては糖鎖抗原の細胞膜上の局在様式、シグナル伝達物質との関連についても検討した。 DSGGのリガンド分子の検討に際しては、COS細胞にヒト肺cDNAをtransfectし、DSGG強発現の細胞との接着assayをもとにexpression cloningを行っている。 その結果、ガラクトシルグロボシド系糖鎖の発現系の違う4種の腎癌細胞の樹立に成功。DSGGを発現している腎癌細胞、肺がん細胞はヒト肺組織、副腎組織髄質部にに接着性を示し、その接着性はDSGG dependentと考えられた。以上よりDSGGは副腎の転移関連分子でもある可能性が示唆された。また、DSGGは細胞膜のmicrodomainに存在し、シグナル伝達に関与している可能性が認められた。 リガンド分子のクローニングに関しては現在まだ検討中である。
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