本年度は本研究課題の最終年である。この3年間に得られた成果は小冊子の形で、別に報告する予定である。 1)前立腺癌の増殖進展に、それがアンドロゲン依存的であれ、非依存的であれ、インテグリン遺伝子の発現が関与しているという、今迄の知見に加えて、その遺伝子発現にmitogen-activated protein(MAP)kinasesを介する経路が関係しているという結果を得た。即ち、アンドロゲン依存的なLNCaP前立腺癌細胞を用いた実験から、アンドロゲンによりMAP kinase活性が増加した。しかし、この活性増加を蛋白レベルで検出するには低濃度すぎた。また、アンドロゲン非依存的なPC-3細胞やLNCaP由来の非依存株においてもMAP kinase活性の増加を認めたが、そのメカニズムの解明には至らなかった。 2)臨床的によく経験されることであるが、前立腺癌の増殖進展が、リンパ節転移となってみられる時、前立腺癌はホルモン治療に抵抗し、アンドロゲン非依存性となっていることが多い。この前立腺癌のリンパ節転移に関係すると考えられるインテグリンalpha 6の発現とMAP kinase活性の関係について検討した。その結果、MAP kinase活性はインテグリンalpha 6のプロモーター領域(Sp1 consensus sequence)を介してその発現を調節していることが判明した。
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