研究概要 |
胎児と母体の自律神経活動を反映する心拍間隔変動の低周波領域と,母体の血圧を24時間観察することによって,胎児自律神経活動がどのような生体リズムを持っているのかを調べ,正常胎児とIUGRにおける胎児を比較することによってリズムの生理学的意義を,さらに胎児リズムの変動が母体からどのような影響を受けているかを検討した. 妊娠35〜38週の正常妊婦、妊娠36週のIUGR胎児(IUGR-A群),妊娠30〜32週のIUGR胎児4例(IUGR-B群),妊娠29〜31週で臍帯血pO2が20mmHg未満でpHが7.2以上が確認された慢性低酸素血症のIUGR胎児3例(IUGR-C群)を対象とした.母体腹壁に1.15MHzの超音波トランスデューサーを装着し,正常群は母体と胎児を同時に,またIUGR-A,B,C群では胎児のみ24時間連続して心拍間隔を測定し、胎児心拍間隔変動に対しパワースペクトル解析をおこなった.低周波(low frequency,LF)領域(0.025〜0.125cycle/beat)を積分してその面積を求めLF-area(単位;104(msec2))た.24時間収集した心拍変動から10分ごとに胎児心拍間隔変動スペクトルのLF-areaを求め(1例につき144個),その1時間値,すなわち6個のLF-areaを平均し1時間ごとのLF-area値(1例につき24個)とし,一日24個の時間平均LF-areaをプロットすることで24時間のLF-areaの変動を表した.この一日の変動性に胎児のリズムの周期性分を検出するため,各群に対し時間平均LF-areaの24時間変動をスペクトル解析した.検出された周期成分をもとにcosinor法にあてはめLF-areaのリズムを表示した. 正常胎児の自律神経活動には12時間周期のリズムが存在し,IUGR児ではこのリズムの振幅が小さくリズムが消失していた。
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