研究概要 |
1) 新たに集積した21家系の家族性卵巣がん家系のうち、8家系にBRCAl 遺伝子の異常が直接シークエンス法にて認められた。 2) BRCAlに異常を認めない姉妹発症の卵巣癌家系23家系25組(叔母姪発症の4家系を含む)の患者ペアを対象として、340個のマイクロサテライトマーカーを用い常染色体全領域を検索、GENEHUNTER,MAPMAKERSIBS ,SIBPALの3つのプログラムを用いてnon parametric linkage analysisを行った。multipoint analysisの前2者ではスコア3以上の有意なマーカーは認められなかったが、two point analysisのSIBPALで、p<0.05以下のマーカーが37個認められた。このうちDIS200、D2S138,D3S1603、D5S636,D10S591D15S206およびD19S425の7マーカーでP値が0.005以下を示し、これらの領域が家族性上皮性卵巣がん関連遺伝子の候補領域と推定された。 3) 23家系において、患者同胞のrelative risk=76.6、分離比p=0.553±0.158となり、優性遺伝形式の遺伝的要因が示唆された。 4) BRCAl遺伝子に異常の認められた21例のパラフィン包埋切片についてBRCAlの3′末端に対するモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行ったところ、exon11の異常によりスプライシングバリアントを有する症例では細胞質のみに染色が認められ、exon11以外に異常が認められている症例では、染色が認められなかった。一方、遺伝子異常が認められなかった症例あるいは正常卵巣上皮では核内もしくは核内と細胞質の両者に染色が認められた。以上より本法は今後BRCAl異常検出のためのスクリーニング法としても有用な方法であることが示唆された。
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