研究概要 |
本年度は解明したことは以下の項目である。 (1)子宮平滑筋の中には、多数の肥満細胞が存在しているが、子宮平滑筋腫瘍ではその数が減少していることが多く、肥満細胞は好塩基顆粒を細胞質内に持ち、その顆粒にはヘパリン、ヒスタミン、蛋白分解酵素などが含まれている。この中のヘパリンに注目し、正常子宮筋中に存在する肥満細胞の生物学的意義の一つを明らかにするために、ヘパリンを培養子宮平滑筋及び子宮筋腫細胞に添加した。すると、ヘパリンはそれぞれの平滑筋の増殖を抑制することが判明した。これには細胞周期G1期で停止された細胞が増加し、平滑筋の分化にかかわる、α-sooth muscle actin、カルポニンh1、P27の蛋白発現が増加していた。このことから、肥満細胞から分泌されるヘパリンは、平滑筋細胞の分化にかかわり、平滑筋組織の再構築などに重要な役割を果たしているものと考えられた。 (2)DNAミスマッチ修復遺伝子の異常により生じる腫瘍抑制遺伝子領域でのreplication errorが様々な癌において明らかにされて以来loss of heterozygosity(LOH)やmicrosatellite instability(MSI)とヒト発癌との関係が注目されている。そこで子宮平滑筋肉腫において9種類の腫瘍抑制遺伝子(TP53,RB1,DCC,NM23,WT1,D14S267,P16,DPC4,PTCH)のLOHとMSIの有無を正常子宮平滑筋と子宮平滑筋肉腫で比較した。その結果、20例中19例に少なくとも一つのLOHが存在し、20例中の11例は2つ以上のLOHを示し、残りの9例のうち4例はLOHとp53の点変異あり、1例はp53変異だけであった。子宮平滑筋肉腫においても腫瘍抑制遺伝子群の異常の蓄積があって悪性化している可能性が示唆された。
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