研究概要 |
臨床上の観察から、子宮筋腫には多数の肥満細胞(ヘパリンを含有している)が存在し、子宮筋腫は妊娠中(HCGの影響下にある)にそのサイズが増大することから、ヘパリンとHCGの子宮筋腫細胞の増殖にたいする影響を検討した。すると、ヘパリヘパリンは子宮筋腫細胞の増殖を抑制することが判明した。これには細胞周期G1期で停止した細胞が増加し、平滑筋の分化にかかわるa-sooth muscle actin、calponin h1、P27の蛋白発現が増加していた。このことから、肥満細胞から分泌されるヘパリンは、平滑筋細胞の分化にかかわり、平滑筋組織の再構築などに重要な役割を果たしているものと考えられた。また、HCGは、子宮筋腫細胞の著明な細胞増殖を起こした。この結果は臨床観察と一致した。 子宮の平滑筋腫瘍の違いを、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、腫瘍抑制遺伝子p53、Ki-67,cyclinE,cyclinA,cdk2,cdc2,とcalponin h1で検討すると、子宮平滑筋肉腫ではER,PR,calponin h1の発現が抑制されていた。ところが、子宮筋腫ではこれと正反対の発現であった。 以上の結果の中で、calponin h1に注目して、calponin h1の遺伝子を平滑筋肉腫細胞に導入すると、平滑筋肉腫細胞が分化するとともに、腫瘍性格を減弱させることが判明した。これはcalponin h1を用いた将来的な平滑筋肉腫における遺伝子治療の可能性を示唆した。
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