研究概要 |
卵胞発育と局所因子の関わりでは,褐色細胞腫瘍より発見され種々の生物作用を有するadreuomedullinの卵巣顆粒膜細胞での発現態度と生物活性を検討すると,免疫組織学的に顆粒膜細胞にadrenomedullin局在を認め,莢膜細胞にはその発現を認めなかった.また卵胞液中のadrenomedullin濃度は血漿中のその濃度より有意に高かった.また培養顆粒膜黄体細胞におけるプロゲステロン産生はadrenomedullin添加により用量反応的に増加した.以上よりadrenomedullinは顆粒膜細胞から産生,分泌されautocrine/paracrine機構を介して顆粒膜細胞の機能・分化に関与していることが示唆された. 他方,子宮内膜とアポトーシス調節機構の関わりでは,高い避妊効果を発揮するプログステロン誘導体(レボノルゲストレル:LNg)徐放型IUS(intrauterine system)の子宮内膜に対する作用機序を明らかにするため,LNg-IUS使用前と3ケ月使用後の子宮内膜組織を採取し,子宮内膜細胞の増殖能についてはPCNAを,アポトーシス調節についてはBcl-2、Fasの発現態度を指標として免疫染色法により検討した.アポトーシス陽性率はin situ DNA 3′-end labeling(TUNEL)法によって検討した.LNg-IUS使用3ケ月の時点では使用前と比較し,子宮内膜腺細胞,ならびに間質細胞においてPCNAの発現は減弱していた.また,Bcl-2蛋白発現は子宮内膜腺細胞に限局して認められたが,使用後には使用前と比較し有意に減弱した.Fas蛋白の発現は,使用前には子宮内膜腺細胞に限局してわずかに認められるのみであったが,使用後には,内膜腺細胞および間質の両者において染色強度は明らかに増加した.さらに,IUS3ケ月使用後には子宮内膜腺細胞ならびに間質の両者において,アポトーシス陽性率が著明に亢進していることが示された.以上より,LNgが子宮内膜におけるFas蛋白の発現増加とBcl-2蛋白の発現減弱をきたし,子宮内膜のアポトーシスを誘導する結果,子宮内膜の萎縮がおこり過多月経の改善がみられる可能性が示唆された.
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