研究概要 |
婦人科癌のなかでとくに子宮体癌(以下体癌と略す)と卵巣癌における糖鎖遺伝子に関する検討を行い、ガラクトース転移酵素について以下の研究成果が得られた。 1. β 1,3ガラクトース転移酵素(β 1,3GT)とβ 1,4ガラクトース転移酵素(β 1,40GT)の発現:1型糖鎖の合成を規定するβ 1,30Tの酵素活性の測定系を申請者らが作成したヒト型モノクローナル抗体HMST-1を用いた薄層クロマトグラフイー免疫染色法を用いて確立した。また、2型糖鎖の合成を規定するβ l,40Tの酵素活性の測定系をモノクローナル抗体H11を用いたELISA法にて確立した。本測定系にて培養細胞および正常組織、癌組織のGT活性を測定した結果、体癌におけるβ 1,3GT活性はβ 1,4GT活性に比べ高値を示した。また、子宮頸癌や卵巣癌では β 1,3GT活性はβ 1,40T活性に比べ低値であった。さらに、ノーザンブロット法にて体癌由来株では頸癌株や卵巣癌株に比べβ 1,4GTmTRNAの発現は低下していることを明らかにした。以上より、婦人科癌における1型糖鎖や2型糖鎖の発現にはβ 1,30Tおよびβ 1,4GTが関与していることが示された。 2. β 1,4GT遺伝子の発現と細胞特性の関連:子宮体癌由来株細胞SNG-Mにβ 1,4GT遺伝子のセンスcDNAあるいはアンチセンスcDNAを導入し、GT高発現株,およびGT低発現株を作成した。また、卵巣癌由来株細胞RMG-IIにβ 1,4GT遺伝子のアンチセンスcDNAを導入し、GT低発現株を作成した。そして、β 1,4GTの高発現株およびβ l,4GTの低発現株のin vitroにおける細胞特性を解析した。その結果、β 1,4GT高発現株は細胞の増殖能や細胞外基質への接着能が冗進したのに対し、β 1,4GT低発現株は増殖能・接着能は低下した。従って、β 1,4GT遺伝子の発現は細胞の増殖能や接着能に関与している可能性が示唆された。
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