研究概要 |
1.ガラクトース転移酵素遺伝子に関する検討 平成10年度にひき続いてβ1,4ガラクトース転移酵素の遺伝子導入細胞を用いた実験系を用いた検討を行った。本年度は、とくにヒト卵巣癌由来培養株細胞にβ1,4ガラクトース転移酵素のアンチセンスcDNAを導入した細胞の特性を検討した。まず、ノザンブロット法にてβ1,4ガラクトース転移酵素(β1,4GT)のアンチセンスcDNAを導入した細胞ではmRNの発現レベルは低下していることが判明した。そこで、in vitroにてβ1,4GT低発現卵巣癌株の細胞増殖能やコラーゲンに対する接着能を解析した結果、β1,4GT低発現株はmockに比べ細胞増殖能・コラーゲンへの接着能は低下していることが明らかになった。 2.AKT2遺伝子に関する検討 AKT2遺伝子の産物は、細胞増殖シグナルの伝達物質の一つであることが明らかになっており、また膵臓癌においてAKT2遺伝子の異常増幅の有無が病勢や予後と関連があることが示唆されている。そこで、本年度は子宮体癌や卵巣癌におけるAKT2遺伝子の発現動態を解明した。AKT2のgenomic fragmentをプローブとして、子宮体癌由来培養株細胞あるいは卵巣癌症例についてAKT2遺伝子増幅の頻度をスロットブロット法にて検討した。なお、卵巣癌組織については、microdissection法にて癌部分と非癌部分を採取し、非癌部分をコントロールとした。その結果、子宮体癌に関しては、培養細胞を用いた解析にて子宮体癌由来培養株細胞6種類の内1種類にAKT2遺伝子の異常増幅が認められた。一方、卵巣癌患者25例中検索した範囲では、AKT2遺伝子の異常増幅は認められなかった。
|