1) ヒト卵巣癌株OVHS-1を樹立した。この株はclear cell carcinomaであり、化学療法に効果が最も低い。この株よりc-erbB-2のpromotor領域とinitiation codonの双方を含むgenomicDNAをpCR Bluescript SK(+)Vectorに挿入した。得られたconstructをpcDNA3 vectorに挿入した。現在は得られたconstructを3T3NIH細胞にtransfectし、immunoblotにて確認を行っている。おのおののplasmid c-erbB-2 DNAを用いてisotype-specific enzyme-linked immunosorbent assayとELIspot assayによりimmunoantigenとなるplasmid DNAを同定していく。 2) c-erbB-2 cDNAのアンチセンスDNAを作成した。in vitroでこのアンチセンスをOVHS-1株に投与すると細胞増殖が抑制された。さらにアンチセンス処理後ではp158の発現が低下しており、c-erbB-2抗体による増殖抑制が消失した。さらにOVHS-1のcisplatinumに対する感受性が約10倍増強した。このことからc-erbB-2の発現と化学療法剤に関する感受性の変化が連動していることが明らかとなった。 3) OVHS-1には化学療法に耐性となるMDR-1ならびにMRPが発現しており、さらには抗アポトーシス作用を持つsurvivinの発現がある。2)の結果よりc-erbB-2抑制はこれらの因子を調節する可能性があると考え、c-erbB-2抗体作用後にそれぞれの発現を検討した。その結果、抗体作用後48時間でsurvivin発現が約1/4になることを発見した。今後はこのメカニズムについて更に検討する。
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