内耳性難聴の原因解明の為に、以下の実験を行なった。 1) モルモットより蝸牛外リンパを採取し、高速液体クロマトグラフィー及び電気化学検出器を用いて、ヒドロキシルラジカルの定量を行なった。その結果、外リンパに於いてアスフィキシア中及びアスフィキシア解除後、ヒトロキシルラジカルが有意に上昇した。一方、血清中ではヒドロキシルラジカルの産生は認めず、又、ヒドロキシルラジカル反応の基質となるサリヲル酸濃度も、アスフィキシアでは変化を受けなかった。(1999年2月ARO Midwinter Meeting(フロリダ)で発表。) 2) すでに我々が解明したアスフィキシア解除後上昇する鉄濃度にて、外リンパ灌流を行ない、内リンパ電位が急速に低下する事を認めた。従って上昇した鉄が、ヒドロキシルラジカル産生も含め、内耳に障害をもたらすことがわかった。(1998年5月日本耳鼻咽喉科学会総会(札幌)で発表。) 3) フリーラジカル産生にかかわる一酸化窒素合成酵素阻害薬(L-ニトロ-N-アルギニン)投与によって、一過性内耳虚血(30分間)による蝸牛活動電位(AP)の閾値上昇が有意に抑制され、同阻害薬に予防的保護効果のあることがわかった。(1998年5月日本耳鼻咽喉科学会総会(札幌)で発表) 4) ヒドロキシルラジカルのスカベンジャーであるマンニトール投与によって、一過性内耳虚血によるAPの閾値上昇が有意に抑制された。
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