研究概要 |
1.bax遺伝子導入単独およびアポトーシス誘導型抗癌剤、CDDPとの併用抗腫瘍効果の研究:継代的扁平上皮癌をC3Hマウスに移植して腫瘍を作成し、長径が1〜1.5cmに達した時点で用いた。これにヒトbax遺伝子発現ベクター(Dr.Borner,Univ.of Fribourgより譲受)を遺伝子銃(Bio-rad社,USA)で移入した。(1)Controlベクター移入(CV)+生食群、(2)CV移入+CDDP群(1.0μg/体重1g,この量では抗腫瘍効果はでない)、(3)baxベクター+生食群、(4)baxベクター+CDDP群、の4群にわけて、それぞれ4回づつ移入・局注した。2週間後には、bax+CDDP群でほとんど腫瘍消失となり(P<0.0001),bax単独でも約50%の抗腫瘍効果(P<0.05)を認めた。免疫組織化学的にBaxが移入されており、その周囲の腫瘍細胞にアポトーシス像が高発現していたので、抗腫瘍効果はアポトーシスの誘導によるものと考察した。 2.Fas/Fasリガンド(L)系による抗腫瘍効果の検討:上記継代扁平上皮癌にはFasLが発現していないことをRT-PCR法で確認後、前記と同様に遺伝子銃で、FasL移入群とコントロール群を作成し、抗腫瘍効果を比較した。その結果、FasL遺伝子移入群で有意に抗腫瘍効果を示した(P<0.0003)。また、有意な生存期間の延長とアポトーシスの誘導をみた。 3.アポトーシス誘導最終遺伝子、CAD(caspase-activated DNase)の抗腫瘍効果の研究:まず、in vitroにおいて、CAD遺伝子移入群はCDDPを併用することによって有意に細胞死を増強した。DNAラダーを確認したので、その細胞死はアポトーシスの誘導であった。次に、1.と同様の方法でin vivoで検討した。CAD遺伝子移入群、CAD遺伝子移入+CDDP併用群で比較検討したところ、CAD+CDDP群で有意の抗腫瘍効果がみられた(P<0.05)。 以上の3群のアポトーシス関連遺伝子導入化学療法はそれぞれ別々の実験系であるが、bax+CDDPの抗腫瘍効果が最も強い印象であり、有効な癌遺伝子療法になり得る。
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