研究概要 |
本年度はヒト官能検査およびラットにおける二瓶選択試験を行った。 I.ヒトにおける官能試験:実験は、被験者に内容を教えずに、基準液と数種の試験液を20mlずつ順不同に味あわせて、基準液と同じ味の強い順に並べさせ、味の強さの程度を+3(強い味)〜0(同じ)〜-3(味を感じない)のスケールで答えさせた。基準液として一定濃度(0.005,0.02,0.08M)のグルタミン酸Na(MSG)、試験液として基準液のMSGに1)クエン酸2Na(Cit)(0.001,0.003,0.01M)を加えたもの、および2)NaCl(0.002,0.006,0.02M)を加えたものを用いた。実験結果から、42人中28人で、Citを加えるとMSGのうま味が有意に増強された。 II.ラットにおける二瓶選択試験:ラットで二瓶選択法によりCitの嗜好性を調べた結果、0.001MではDWとほとんど差がなく、0.003Mには強い嗜好性を示すが0.01Mでは逆に忌避する傾向が認められた。しかし、MSGとMSG+Citの間では、0.08M MSG+0.01M Cit以外は全てMSG+Citの混合物をMSGより好む傾向が認められた。また、MSG+IMPよりもMSG+IMPに0.003M Citを加えたものを好む傾向を示した。これらの結果から、ヒトおよびラットにおいてクエン酸にはうま味増強作用があることが示唆された。さらに、今後、神経生理学的にMSGおよびIMPに対する味覚応答がクエン酸によってどのように変化するかを定量的に調べる必要がある。
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