1)ラット軟口蓋に与えた味覚刺激に対する大錐体神経積分応答における、甘味抑制蛋白質gurmarinの抑制効果を調べた結果、6種の糖およびサッカリンの応答が40%程度にまで有意に抑制された。また、D-アミノ酸はL-体とは異なり顕著なgurmarinの抑制効果を認めた。これらの結果から、D-アミノ酸の多くはラットにおいても甘味受容メカニズムによって味覚応答を生じさせていることが示唆された。また、塩基性および中性アミノ酸のpHを酸によって低下させるとラット鼓索神経応答が顕著に増大し、それはα位のアミノ基のチャージによる事が示唆された。これらの結果から、クエン酸の味覚刺激効果はジカルボン酸としてのそれ自体の刺激効果のみならず、pH低下によるアミノ酸の味覚刺激増強効果も有する可能性が示唆された。 2)ヒトにおいて、可溶性澱粉は蔗糖の甘味を増強する作用を持つことがわかった。しかし、可溶性澱粉によるクエン酸の味覚増強あるいは変容作用は認められなかった。さらに、クエン酸ソーダがMSGのうま味を有意に増強することが分かった。 3)ラットを用いた二瓶選択法によりクエン酸ソーダの嗜好性を調べた結果、0.001MではDWとほとんど差がなく、0.003Mには強い嗜好性を示すが0.01Mでは逆に忌避する傾向が認められた。しかし、グルタミン酸ソーダ+クエン酸ソーダの混合物をグルタミン酸ソーダ単体より好む傾向が認められた。また、グルタミン酸ソーダ+IMPよりもグルタミン酸ソーダ+IMP+クエン酸ソーダをより好む傾向を示した。これらの結果から、ヒトおよびラットにおいてクエン酸にはうま味増強作用があることが示唆された。
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