研究概要 |
1) 頭頸部癌における癌抑制遺伝子の検索と臨床への応用 頭頸部扁平上皮癌症例90例の治療前の腫瘍組織における癌抑制遺伝子、p53の発現を検索するとともに、患者の病期分類や治療反応性、および予後との関連を検討した。免疫染色は一次抗体に,抗p53モノクローナル抗体1801および240を使用し,ABC法を施行した。 腫瘍組織におけるp53蛋白の発現:腫瘍細胞の核が均一に染色されたものを陽性症例とした。腫瘍細胞に隣接する非腫瘍性粘膜,または正常粘膜10例において,核陽性像は認めなかった.p53陽性症例は90例中45例(50.0%)に認めた.分化度,T分類,N分類,原発部位では明らかな差を認めなかった。p53陽性症例では転移の頻度が高い傾向を認め(p<0.10), p53陽性症例はp53陰性症例に比べ有意に低い生存率を認めた(p<0.05)。 2) 頭頸部癌におけるhumam papilloma virus(HPV)の検索 腫瘍組織からDNAを抽出し、悪性腫瘍に認められるHPV16, 18,33,52b,58型において高い相同性を示しており,HPV2,6,11型とは相同性がないコンセンサスプライマーを使用し、polymerase chain reaction(PCR)法により,HPV-genomeを検索した。陽性コントロールとして子宮頚癌由来細胞株HeLa(HPV DNA18型),CaSki(HPV DNA16型)を使用した。腫瘍組織におけるHPV DNAの局在の検索には,In situ hybridization法を用いた。DNA probeには,HPV6,11,16,18,30,31,33,35,45,51,52の検索に有用なFITC標識wide spectrum cDNA probe (DAKO)を用いた。切片を脱パラフィンした後,FITC標識 wide spectrum cDNA probeを滴下し90℃,6分間反応させた後,37℃にてオーバーナイト反応させ,DNA変性とHybridizationの処置とした。 PCR法による腫瘍組織におけるHPV DNAの検出:HPV DNAは90例中9例(10.0%)に検出された.その内訳は中咽頭癌8例,上顎癌1例であった.中咽頭癌症例の29.6%,上顎癌症例の6.7%であった.HPVのタイプはHPV16型が8例(88.9%),HPV18型が1例(11.1%)であった.HPV DNA検出症例の予後は,生存例6例,他病死2例,原病死1例であった. HPV DNA陽性症例はHPV DNA陰性症例に比べ有意に高い完全寛解率を示した。ISH法による腫瘍組織におけるHPV DNAの局在を検索したところ、PCR法によりHPV DNAが検出された中咽頭癌8症例のうち7例において,腫瘍細胞の核に一致してHPV DNAの局在を認めた.ISH法によりHPV DNAの局在が確認された7症例は,p53蛋白の発現を認めなかった.
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