研究概要 |
(1) ラット網膜虚血・再潅流障害における細胞死の検討 ラット網膜に虚血再潅流障害を惹起し、アポトーシスを起こしている細胞に発現する遺伝子産物について検討を行った。 1)ラット網膜では、網膜内層の細胞死にcaspase-3が網膜外層の細胞死にcaspase-1が深くかかわっていることが明らかとなった。 2)一方、同じ虚血・再潅流障害であっても、水平細胞では細胞周期関連遺伝子であるP16INK4の発現が認められ、ネクローシスの形態を示すが、アマクリン細胞ではP16INK4は発現せず、アポトーシスの像を示すことを見いだした。 3)虚血・再潅流障害では、再潅流時に活性酸素が発生し、この活性酸素が障害の主役を担っている可能性を示した。 (2) ラット網膜虚血・再潅流障害における神経節細胞の細胞死の検討 ラット上丘に蛍光色素を注入し、網膜神経節細胞を逆行性にラベルした。アポトーシスを起こす網膜神経節細胞ではAP-1遺伝子が発現していること、caspase-1,caspase-3の発現は殆ど認められないが、caspase-2の発現が認められることを見いだした。また、BDNFを投与すると、網膜神経節細胞の細胞死が抑制されることが分かった。この系では、BDNFは、AP-1遺伝子のひとつであるc-Junの発現を低下させることなくcaspase-2の発現を抑制することが明らかとなった。 (3) RCSラット変性網膜に対する遺伝子治療の試み 網膜変性症を発症するRCSラットを材料にアデノウイルス関連ウイルスをベクターにした実験的遺伝子治療を試みた。RCSラットでは網膜視細胞のアポトーシスが発生するが、代表的なアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-xLを組み込んだAAV-Bcl-xLを網膜下に注入したところ、処置群では網膜視細胞は有意に保存されていた。
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