本年度はまずヒト腸管のリンパ球を免疫組織学的に解析するために必要な器材の整備と各種リンパ球マーカーを検出する抗体の検定をおこなった。抗CD3抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗c-kit抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体などの主なリンパ球マーカーの検定が終了した。これらのマーカーを用いてヒト腸管組織の免疫組織化学的検索が始まっているが、これまでに明らかとなったのは以下の点である。 1、 ヒト腸管にはc-kit陽性細胞が多く認められるが、集積を作って存在することはない。主にリンパ球の小集積(従来孤立リンパ小節といわれてきたもの)の周辺の粘膜固有層に存在する。 2、 従来孤立リンパ小節といわれてきたリンパ球小集積はその大きさにかなりの幅があり、分布も絨毛の中にはまりこんだものから、粘膜筋板を越えて粘膜下層にまでおよぶものなど様々な形態・分布を見せる。また、これらのリンパ組織はBリンバ球が中心に分布しTリンバ球やc-kit陽性細胞が周辺に多く分布しており、従来考えられてきた孤立リンパ小節という概念とは異なる組織である可能性があり、また、この知見はマウスの腸管に存在するクリプトパッチ類似のリンパ組織(未発表データ)と共通点があり今後の解析が待たれるところである。 3、 新生児から乳児期にかけての腸管上皮細胞間リンパ球の解析は現在サンプルが集まりつつあり、近々解析が始まる予定である。 以上のような結果が得られたが、今後の方針として蛋白レベルの解析だけでは十分でない印象がありinsitu hybridizationによるmRNAの解析を加えるべく準備を始めている。
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