これまでに手術材料として得られた幼児期空腸、新生児期虫垂について上皮細胞間リンパ球とクリプトパッチの有無を組織学的に検索した。その結果、上皮細胞間リンパ球は少ないながらも新生児期から虫垂には存在することが明らかとなった。また、幼児期には成人に匹敵する上皮細胞間リンパ球が存在した。しかし、クリプトパッチに関しては、ヘマトキシリンエオジン(HE)染色でクリプトパッチ類似リンパ組織が粘膜固有層に存在するものの、免疫染色によって、c-kit陽性細胞が集積しているリンパ組織は存在しないことが明らかとなり、生後の腸管にはマウスクリプトパッチ相当リンパ組織は存在しないという結論とした。HE染色で認められた粘膜固有層に存在する小リンパ組織はこれまでは一次孤立リンパ小節といわれてきたものである。免疫組織学的検索では大部分はCD19陽性細胞で構成されており、わずかにCD3陽性細胞が散在している。以上の結果から、胎児期に上皮細胞間リンパ球を上皮細胞間に供給するようなリンパ球前駆細胞が集積したリンパ組織が存在する可能性があると考えられた。
|