生体内遺伝子導入法による薬剤投与システムを応用した新生骨誘導法の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10470371
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 吉村 浩太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60210762)
• 研究分担者: 權太 浩一 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (50254925) ; 中塚 貴志 埼玉医科大学, 教授 (80198134)
• キーワード: 遺伝子治療 / アデノウィルス / 骨形成蛋白 / 骨格筋 / 筋移植 / 筋再生 / 異所性骨化

研究概要

遺伝子工学的手法を用いて、供与されたヒト骨形成蛋白(Bone Morphogenetic Protein-2;BMP-2)遺伝子(cDNA)を発現プラスミドあるいは非増殖型アデノウィルスに組み込み、遺伝子導入用ベクターを作製した。これらを、さまざまな経路(経静脈的、経動脈的、局所滴下、筋肉内注射)を通じてラット下腿ひらめ筋に投与してBMP-2遺伝子を発現させた。しかしながら、これらのいずれの投与方法によっても標的器官のひらめ筋には骨形成が生じなかった。生体内における筋肉内での骨形成には、BMP-2遺伝子の発現以外に別の因子が必要であると考え、遺伝子導入に加えさらに標的のひらめ筋に、局所麻酔薬リドカイン局注、圧挫損傷、同所性移植による血流遮断等を加えて筋の変性および再生を引き起こした。その結果、ひらめ筋に対し、同所性移植による血流遮断と非増殖型アデノウィルスの直接筋注によるBMP-2遺伝子の導入を同時に行った場合に、ひらめ筋全体の強い骨化が起こることが確認された。筋の同所性移植操作のみや、移植操作に加えリポーター遺伝子を組み込んだ非増殖型アデノウィルスの筋注を行っただけでは、骨形成は全く起こらなかった。この骨化はきわめて再現性が高く、また標的のひらめ筋に限局していた。これらの結果より、非増殖型アデノウィルスベクターを用いた生体に対するBMP-2遺伝子治療の有効性が証明された。
さらに、本モデルにおける骨化機構を解明するために、(1)リポーター遺伝子LacZのアデノウィルスベクターによる遺伝子導入における導入効率の検定、(2)RT-PCR法によるBMP-2遺伝子の発現の確認、(3)移植筋におけるBMP受容体の検索を行い、それぞれ、(1)本遺伝子導入法の高い導入効率、(2)BMP-2遺伝子導入筋に限ったBMP-2遺伝子の発現、(3)移植に伴う筋肉内のBMP受容体の誘導、が証明された。

研究成果

• [文献書誌] Yoshimura K, et al.: "Myosin heavy chain expression in skeletal muscle autografts under neural or aneural conditions." Journal of Surgical Research. 75(2). 135-147 (1998)
• [文献書誌] Yoshimura K, et al.: "Immunohistochemical analysis of clinically transplanted muscles." Journal of Surgical Research. 79(1). 31-38 (1998)
• [文献書誌] Yoshimura K, et al.: "A regenerative change during muscle adaptation to denervation in rats." Journal of Surgical Research. 81(2). 139-146 (1999)
• [文献書誌] Yoshimura K, et al.: "The effect of reinnervation on force production and power output in skeletal muscle." Journal of Surgical Research. 81(2). 201-208 (1999)
• [文献書誌] Gonda K, et al.: "The novel sphingosine 1-phosphate receptor AGR16 is coupled via pertussis toxin-sensitive and -insensitive G-protein to multiple signalling pathways" Biochemical Journal. 337. 67-75 (1999)