本研究では瘢痕形成の機序を明らかとするために、まずEGF、bFGFやTGF βなどの線維芽細胞の増殖を促進することが知られているcytokineの線維芽細胞増殖効果について確認した上でその効果を各種の薬剤が阻止することが可能であるかを検討してきた。その際にどのようなcytokineを線維芽相胞が分泌するのかについても検討し、既に前年度までにin vitroのcollagen gel収縮modelを用いた検討で明らかとしてきた。その結果ではEGF、bFGF、prostaglandin E_1がin vitroでcollagen gelの収縮を抑制することが明らかとなり、それに対してTGFβ_1はcollagen gelの収縮を促進する作用を持つことを確認した。この成果を踏まえ本年度は各種薬剤や各種cytokineとcollagen spongeの併用による効果に関しても動物実験により検討を加えた。その際にまず創傷治癒遅延modelを作製する手法を確立した上で実験を行った。その結果、PGE_1やbFGFさらにTGFβがcollagen spongeとの併用で創収縮を抑制する効果を持つことを明らかと出来るとともに、詳細な病理組織学的検討によりその機序が薬剤により異なっている可能性も明らかとできた。また、TGFβに対するantisenseの効果についても同様な手法を用いて比較検討するとともにその結果を踏まえて動物実験を行なう計画であったがわれわれの作製したantisenseではin vitroでTGFβ産生に対して影響を与えることが確認できなかっな。この点、今後の研究でさらに有効なantisenseの設計が必要であることが課題である。このようにin vitroとin vivoの両面から創の収縮という創傷治癒における重要な反応を制御するする事が可能であることを明らかとし、今後のの研究の発展性を見い出すとともに、臨床応用に関する貴重な基礎知見を明らかとすることができたのが本研究の成果である。
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