口腔癌抑制遺伝子候補doc-1の遺伝子産物pDoc-1は、pDoc-1-GST融合蛋白と培養細胞のcell lysateを用いたpull down assayおよび細胞周期制御関連蛋白に対する各種抗体を用いたwestern blottingによりpDoc-1とcyclin-dependent kinase 2(CDK2)が結合するという予備的な実験結果をすでに得ていが、これまでそれを証明する十分な証拠は得られてなかった。そこで培養細胞へのpDoc-1とCDK2発現ベクターのトランスフェクション、免疫共沈降、westernblotting、protein kinase assayなどにより、pDoc-1はp34 CDK2(CDK2のmonomeric nonphosphorylated form)と特異的に結合し、(おそらくubiquitinの関わるproteolysisの経路を介して)細胞内CDK2を減少させ、かつCDK2-associated kinase activityを減少させることで細胞周期をG1期にシフトさせ、細胞増殖を抑制する可能性を示唆した。また、変異型pDoc-1蛋白を用いることで、CDK2との結合にはpDoc-1のC末端側109〜111番目のアミノ酸(TER)が重要であるという可能性が示唆された。 なおpDoc-1に対するモノクローナル抗体のひとつであるD12-18が認識する約24kDaの蛋白についてpDoc-1が修飾されたものなのか、あるいは全く別の蛋白であるのかについて明かにするためp24の精製を試みているが発現量が究めて微量のため、まだ成功していない。しかしながら2次元電気泳動とwestern blottingの結果よりpDoc-1およびp24とも塩基性蛋白である可能性が示唆され、同一のものでなくとも究めて類似した蛋白であると考えている。 また膜貫通ドメインを欠く変異型Epidermal growth factor receptorの機能解析についても着手しているが、いまだ十分な結果は得られてない。
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