(1)Epidermal growth factor receptor(EGFR)mRNAのアミノ酸翻訳領域における口腔癌に特異的なbase change(A→T)(2073番目の塩基)が存在することを報告したが、mRNAにおいてその変異を認めた細胞株についてgenomic DNAレベルで調べてみると、実はそのbase changeは認めず、正常型と同一であった。すなわち口腔癌においてはgenomic DNAは正常型であるが、transcriptionの段階でA→Tの変異がおこるRNA editionが起っている可能性が示唆された。このRNA editionは比較的新しい概念であり、A→Tの変異を起こす酵素については同定がなされてないが、癌化の過程と関連している可能性が考えられ、今後の新たな課題のひとつとして検討していきたい。 (2)口腔癌抑制遺伝子候補doc-1の遺伝子産物pDoc-1について特異的抗体を作成してきたが、その過程でpDoc-1の約2倍のサイズのバンド(P24)がウェスタンブロットで検出されることを報告してきたが、その後の検討の結果、これはpDoc-1の2量体であることが強く示唆された。興味あることに単量体のpDoc-1は核内に多く存在するのに対して、2量体と考えられるp24は主にサイトゾールに存在することがわかった。ただし、dcc-1遺伝子と極めてホモロジーの高いDOC-1Rという遺伝子産物とのヘテロダイマーである可能性も否定できず、検討中である。
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