研究課題/領域番号 |
10470387
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 正 東北大学, 歯学部, 教授 (50005021)
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研究分担者 |
岩見 憙道 東北大学, 歯学部, 助手 (60005030)
高橋 信博 東北大学, 歯学部, 助教授 (60183852)
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キーワード | Streptococcus mutans / 糖代謝 / 糖アルコール代謝 / ソルビトール / キシリトール / 酸素 / 代謝阻害 |
研究概要 |
今年度は、代表的歯垢微生物Streptococcus mutansの糖アルコール代謝活性について検討した。代謝活性は(1)糖および糖アルコールからの酸産生速度を電位差滴定計によって、(2)その時の代謝産物を今回導入したカルボン酸分析計によって測定することにより評価した。 1. ソルビトール代謝活性の阻害:嫌気条件でソルビトールを炭素源として培養したS.mutansを空気に曝し再び嫌気条件に戻したところ、ソルビトール代謝活性はほぼ失われた。この現象はソルビトール代謝に関わる酵素pyruvate formate-lyaseが酸素により不可逆的に失活するためと説明されていたが、代謝中間体および補酵素の菌体内レベルを検討することにより以下のことが明らかになった。(1)ソルビトール代謝が阻害されているとき、代謝上流のソルビトール6リン酸(S6P)およびフルクトース6リン酸(F6P)が減少し、代謝下流のピルビン酸が増加していたことから、ソルビトールからS6Pを生成するホスホエノールピルビン酸リン酸転移酵素(PEP-PTS)およびS6PからF6Pを生成するS6P脱水素酵素(S6PDH)の阻害が起こっていると考えられた。このとき菌体内NADHレベルが上昇していた。(2)しかし、空気曝露によりPEP-PTSとS6PDHは失活していないことから、高レベルのピルビン酸はPEP-PTSに対して、高レベルのNADIIはS6PDHに対して、フィードバック阻害(いわゆるend-product inhibition)を起こしていると考えられた。 2. キシリトールによるグルコース代謝阻害:グルコースを炭素源とした培地にキシリトールを混合してS.mutans培養したところ、明らかな増殖の抑制がみられた。また、グルコースで培養したS.mutansを洗菌後、キシリトール存在下でグルコースを代謝させるとグルコース代謝阻害(グルコースからの酸産生阻害)がみられた。このことからキシリトールによる増殖阻害の一部は糖代謝阻害に起因するものと考えられた。
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