研究概要 |
リアノジン受容体によるCa^<2+>-induced Ca^<2+> release(CICR)機構はCa^<2+>振動やCa^<2+>波の発生を媒介し、細胞機能発現に重要と考えられている.最近NADから生成するcyclic ADP-ribose(cADPR)が内因性カフェイン様物質として,リアノジン受容体アゴニストと目され,精力的な研究が行われてきたにもかかわらず,cADPRの作用発現性,受容体刺激に応答した生合成・分解系の調節,生理的役割などメッセンジャーとして必要不可欠な条件が未だ証明されていない.本研究はこれらについて検索し,以下の結果を得た. 1. 膜透過性とした好中球,唾液腺細胞,副腎クロマフィン細胞で,cADPRはリアノジン受容体チャンネル感受性経路でCICR機構を感作し,Ca^<2+>動員作用を引き起こした.さらに本作用はFK506,rapamycinにより抑制され,cADPRの作用発現にFKBP(FK506 binding protein)を介した機構が含まれることを認めた. 2. cADPR生合成活性および分解活性は共に分泌刺激に応答して刺激後短時間で促進されることを見い出し,生合成活性の促進の機構として,刺激による細胞質Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)上昇→adenylate cyclase活性化→cyclic AMP濃度上昇→cyclic AMP依存キナーゼによるリン酸化を介した情報伝達カスケードによることを明らかにした. 3. 無傷細胞でリアノジン受容体阻害剤およびFK506,rapamycinは分泌刺激による[Ca^<2+>]i上昇の持続時間を顕著に短縮することから,cADPR/CICR機構が[Ca^<2+>]i上昇の維持に寄与していることを示した.さらに,これらの処置は分泌反応も著明に抑制することを認めた. これらの成果は,cADPR細胞内レベルが生理的刺激により迅速にコントロールされることを窺わせるものであり,cADPRがCICR機構活性化のセカンドメッセンジャーとして機能していることを強く示唆している.加えて,cADPRが仲介するCa^<2+>動員系が生理的な刺激-分泌応答に促進的に機能していることを明らかにした. 又,cADPRの標的分子については,FKBPのみではcADPRのCa^<2+>動員作用を完全に説明することは困難であるとの実験事実から他の因子の解明にむけ,現在さらに研究をおしすすめている.
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