研究概要 |
Cyclic ADP-ribose(cADPR)はリアノジン受容体(RyR)の内因性アゴニストとして注目され,精力的な研究が行われてきたにもかかわらず,作用発現性,生合成,分解系,生理的役割等メッセンジャーとして必要不可欠な条件が証明されていない.本研究は,cADPRを介する情報伝達系の分子機構とその生理的意義や病態の解明を目的とする.すでに,平成10年度においては,受容体刺激に応答した生合成調節機構を明らかにし,cADPRがFKBPに作用してCA^<2+>動員作用を引き起すことを示した.本年度は,これらの点を更に深化させると共にcADPRの生理的役割,病態との関連性について検討した. 1.cADPRはKFBPに作用し,FKBP-RyR分子間相互作用に影響してチャンネルを活性化することを示した. 2.cADPR生合成酵素ADP-ribosyl cyclaseはA-PKで直接活性化され,特定部位に限定したcAMPの上昇を必要とすることを示唆する結果を得た. 3.cADPRはCa^<2+>動員作用に基づくCa^<2+>プールの枯渇によりstoreーoperated Ca^<2+> entry機構を活性化することにより[Ca^<2+>]i上昇の維持に寄与していた.さらに,cADPRは[Ca^<2+>]I動態の調整を介して分泌応答を促進的に調整することを明らかにした. 4.cADPRの関与は刺激の種類により異なることを認め,cADPRは生理的刺激であるAChの作用に特に強く関与していた. 5.病態との関係について,cADPRの誘発するCICRの活性化がCa^<2+>オーバーロードによる神経細胞死にいかに関与するか,8Br-cADPR,RyR阻害薬,FKBP作用薬を用いて検討を試みたが,一致した成果が得られなかった.この点については今後の課題である. 以上,cADPRの生合成機構,作用発現機序および生理的役割についてその一端を明らかにできた.
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