1)CXCR4アンタゴニストであるT134に耐性となったHIV-lを作成し、そのenv領域のアミノ酸変異を検討した。さらに、この耐性ウイルスに対する、T140やALX40-4C、AMD3100、CXCR4のナチュラルリガンドのSDF-1およびカポジ肉腫の原因と考えられているKSHVHHV8遺伝子にコードされているケモカイン様物質であるvMIPIIの抗ウイルス活性を評価し、交差耐性の有無を検討した。その結果、T134耐性HIV-1に見られたアミノ酸変異は、SDF-1やAMD310O耐性ウイルスに関して報告されているアミノ酸変異を含み、さらにより多くの変異がみられることが判明した。AMD3100耐性HIV-1に対しては、T134やT140は感受性を有していることは既に我々が報告していたが、T134耐性HIV-1に対しては今回試験したすべてのCXCR4アンタゴニストに対しても抵抗性を示し、交差耐性を示すことが判明した。すなわち、env領域のアミノ酸変異の多さに順じて交差耐性を示す薬剤の種類が多くなるのではないかと考えられた。また、耐性獲得の機序として、利用するコレセプターが異なるのではないかと考えてこれを検討した結果、Tl34耐性HIV-1は野生株のX4HIV-1と同様にCXCR4をコレセプターとして利用していることも判明した。 2)HHV8感染細胞に関する実験としては、HHV8のウイルス遺伝子が組み込まれているB細胞株であるBCBL-1をTPAで刺激して培養液中に遊離したウイルスを回収し、それを歯肉上皮細胞に感染させ、株化することを行った。また、正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)とBCBL-1細胞との混合培養を行い、形態的な細胞変化の観察とHHV8DNAおよびmRNAの発現をPCRで検討した。結果としては、歯肉上皮細胞の初代培養でHHV8非感染の場合では1-2ヶ月間の継代が可能であったものが、HHV8を感染させたことで1週間程度で細胞が死滅した。しかしながら、細胞の形態的な変化は認められなかった。HUVECにHHV8を感染させた場合およびBCBL-1とHUVECとを混合培養した場合、1週間程で細胞の形態の変化、増殖率の変化などがみられた。
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