研究概要 |
グルココルチコイドの大量投与により、ステロイド誘導性の骨粗鬆症が発症することが知られている。しかし、ビタミンD代謝におけるグルココルチコイドの影響については不明な点が多い。マウスにグルココルチコイドのDexamethasone(Dex)を投与すると、腎における24-水酸化酵素発現を強く促進することを報告した。そこで、骨と腎の細胞における、24-水酸化酵素発現抑制に対するDexの作用機構を解明する目的で、本研究を行った。Subconfluentになった骨芽細胞様細胞(UMR-106)及び腎尿細管細胞(LLC-PK_1)を無血清培地で24時間培養した。UMR-106の場合、1,25(OH)_2D_3を添加後24時間培養し、さらにDexを加えて4〜48時間培養した。LLC-PK_1には1,25(OH)_2D_3とDexを同時に添加して48時間まで培養した。24-水酸化酵素mRNA発現量の測定は細胞からTotal RNAを抽出してNorthern blot法により行った。10^<-7>Mの1,25(OH)_2D_3の存在下で骨、腎いずれの細胞でも24-水酸化酵素mRNA発現量、及び酵素活性はDexの用量依存的、また経時的に上昇した。この促進作用は他のステロイドホルモン添加では観察されなかったことから、Dexに対し特異的であった。Dex単独の投与では24-水酸化酵素発現はみられなかった。また、Cycloheximideの前処理によってもDexの促進効果は消失した。さらにDex投与によりc-fos mRNA発現量が著明に上昇した。以上の結果から、Dexの24-水酸化酵素発現促進作用は新たなタンパク性の転写促進因子の合成、少なくとも一部はFosタンパク質の合成促進を介して発現するものと考えられた。
|