研究課題/領域番号 |
10470395
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
宮浦 千里 東京薬科大学, 薬学部, 助教授 (20138382)
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研究分担者 |
石見 佳子 国立健康, 栄養研究所・食品科学部, 主任研究官 (50154159)
須田 立雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (90014034)
遠藤 賀子 東京薬科大学, 薬学部, 助手 (80297605)
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キーワード | 女性ホルモン / 骨粗鬆症 / エストロゲンレセプター / Bリンパ球 / 骨髄造血 / 骨吸収 |
研究概要 |
高齢化社会への急激な移行に伴い、我が国でも骨粗鬆症患者の急増が大きな社会問題となっている。特に閉経後骨粗鬆症には女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下が関与し、エストロゲンが欠乏すると骨吸収が亢進して著しい骨量減少が起こる。我々は閉経後骨粗鬆症のモデル動物である卵巣摘出マウスを用い、骨量減少に先立って骨髄の造血が著しく促進され、未熟なBリンパ球が特異的に増加していることを報告して来た。そこで、本研究では、骨髄のBリンパ球造血の亢進と破骨細胞の分化の関係を検索した。さらに、近年発見された新規のエストロゲンレセプターの解析および植物性エストロゲンの骨への作用を調べることにより閉経後骨粗鬆症の成因解明を目指した。卵巣摘出(OVX)マウスの骨髄では、未熟なBリンパ球が特異的に増加している。そこで、そのBリンパ球を特異的抗体の磁気ビーズ力ラムを用いることにより採取・精製する方法を検討した結果、98%以上の純度で採取が可能となった。そこで、その精製リンパ球における破骨細胞分化因子(ODF)の遺伝子発現を調べたところ、構成的にODF mRNAを発現していることが明らかとなった。また、そのBリンパ球と骨髄ストローマ細胞(ST2)を共培養したところ、著しいODF発現が誘導された。すなわち、エストロゲンの欠乏により蓄積したBリンパ球自身がODFを発現していること、Bリンパ球の接着刺激を受けたストローマ細胞や骨芽細胞がODFを発現することより、これら骨髄環境の変動が骨吸収亢進による骨量減少に関与していることが示唆された。一方、エストロゲンの作用機構の解明を目的として、マウスの骨および骨髄におけるエストロゲンレセプターERαおよびERβのmRNAの発現分布を調べた。その結果、骨および骨髄においてERβの発現がERαより高いこと、胎児期および新生児期の骨ではERβの発現のみが検出された。この結果は、ERβが骨へのエストロゲン作用を担っていることを示唆する。さらに本研究では、植物性エストロゲンであるゲニステインの作用をOVXマウスを用いて検討し、ゲニステインは子宮にほとんど作用することなく骨および骨髄に対してエストロゲン作用を発揮し、エストロゲン欠乏に起因した骨吸収亢進を正常化することが明らかとなった。
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