研究概要 |
前年度までの解析により、ワクチンの最有力抗原である13残基ペプチド(PAc365-377)、TYEAALKQYEADL、に関して、交叉反応性抗体(阻害抗体)の誘導に必須のアミノ酸配位、H-2^d,H-2^k,H-2^aそれぞれの遺伝子型マウスで抗体の誘導に必須のそれぞれのアミノ酸配位(アグレトープ)、を明らかにした。今年度はそれら必須アミノ酸以外のアミノ酸を人為的に変化(10、11、12番目のEDAをQTEに置換)させることにより、これまで不応答だったマウスにおいて、目的抗体を誘導させることに成功した。ペプチドワクチン最大の弱点であるMHCの遺伝子拘束によるヒトによる不応答性の打開策として、マルチアグレトープ型のペプチド抗原を人為的にデザインすることが可能であることを、始めて実証し、ペプチドワクチンの実用化に向け一歩前進させた。 他方、抗体誘導能の増強方法に関しては、スペーサーとして用いるアミノ酸の種類および数に付き検討し、誘導されてくる抗体の質、量、いずれにおいてもリジンダイマー(-KK-)がスペーサーとして最適であることを明らかにした。また、多価ペプチド抗原のモデルとして2種の異なったペプチドをリジンダイマーで連結したところ、スペーサーを挟んでN末側のペプチドに比べC末側のペプチドにおいて、抗体誘導能がより高いこと、また、N末側がT細胞エピトープ、C末側がB細胞エピトープとしてより効果的に認識されること等を明らかにし、実用段階におけるペプチド抗原の連結方式の基本形を完成させた。
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