研究概要 |
前年度までの解析から、ワクチンの最有力抗原である13残基ペプチド(ユニットペプチド:U)、TYEAALKQYEADL、に関して、H-2^d,H-2^k,H-2^aそれぞれの遺伝子型マウスで抗体の誘導に必須のそれぞれのアミノ酸配位(アグレトープ)が明らかとなり、さらに、それら必須アミノ酸以外のアミノ酸を人為的に変化(10、11、12番目のEDAをQTEに置換)させることにより、これまで不応答だったマウスにおいて、目的抗体を誘導させることに成功した。 今年度はこのペプチドの10、11、12番目のアミノ酸残基を、さらに人為的に置換することにより、マウスMHC(H-2)遺伝子型の1種類のみ(v)、および、2種類(a,v)、3種類(d,f,k)、4種類(a,d,f,k)、5種類(a,d,f,k,v)同時に抗体誘導能を持つそれぞれのペプチドの設計に成功した。それにより、ペプチドワクチン最大の弱点である『MHCの遺伝子拘束によるヒトによる不応答性』の打開策として、ヒト用T細胞エピトープのマルチアグレトープ型のペプチド抗原を人為的にデザインすることが可能であることを確信し、そのプロトタイプとしてOverlappingMultiagretope Peptide(OMP)をデザインした。このOMPはヒトMHC(HLA)DR遺伝子型のうち8タイプ(1,3,4,5,6,7,8,11)のアグレトープを同時に含むように設計された20残基のペプチドである。さらに、前年度完成させた実用段階におけるペプチド抗原の連結方式の基本形に則り、OMPとユニットペプチドをリジンスペーサーで連結した35残基のペプチド抗原(OMP-KK-U)が、マウスにおいてではあるが、目的抗体を効率よく誘導することを実証した。 現在、この35残基ペプチドを基本とした経鼻免疫用ワクチンのデザインを検討している。
|