研究概要 |
報告1. 雌雄Wistarラット(180g)を用い、以下の4群に分けた。1)雄および雌の卵巣非摘出、2)卵巣摘出後DMBA(9,10,-dimethyl-1-,2-benzanthracene)を投与、3)DMBA誘発腺癌発育後にtamoxifen投与あるいは卵巣摘出を行った。1%DMBAアセトン溶液0.1mlを2週毎に6回顎下腺に注入した。Tamoxifen(0.5mg/100gB.W.)の経口投与は週2回、6週間行った。実験期間はDMBA投与終了後2ヵ月までとした。病理組織学的検索では、抗ER(エストロジェン・レセプター)抗体および抗サイトケラチン抗体、TUNEL法およびBrdUなどを用いた。 結果:1)卵巣非摘出ラットのDMBA投与では、腺癌と扁平上皮癌の比率は7:1であり、卵巣摘出後のDMBA投与では、腺癌が著しく減少し、扁平上皮癌が有意に増加した。2)腺癌発育後のtamoxifen投与では癌腫の2/3が同様の移行像で、次いで腺癌、扁平上皮癌の順であった。3)雌および雄において発生時から扁平上皮癌の像を呈する癌腫と腺癌から移行した扁平上皮癌とは組織像に差異があった。4)腺癌から扁平上皮癌への移行の初期の癌胞巣にはER発現細胞が多くみられたが、扁平上皮癌の像を示す部分では、ER発現細胞は減少し、BrdU標識細胞は増加した。 結語:顎下腺腺癌の組織像の変異にはエストロジェンの関与が示唆された。 報告2. 19症例のヒト粘表皮癌についてER、MIB-1(増殖活性)、サイトケラチンの発現を免疫組織化学的に検索した。類表皮細胞は中間細胞よりERの発現率が高く、粘液細胞ではほとんど発現がなく、サイトケラチンの発現様式からERは腫瘍細胞の分化に関連していることが示唆された。また、リンパ節転移例などから、ERの役割に性差がある可能性が示唆された。
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