研究課題/領域番号 |
10470400
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (20193211)
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研究分担者 |
池田 やよい 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (00202903)
玉盛 三美 東京医科歯科大学, 医学部, 学術振興会特別研究員
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キーワード | 口腔癌 / 転写仲介因子 / p300遺伝子 / 癌抑制遺伝子 / ヒストンアセチル化酵素 / ブロモドメイン |
研究概要 |
口腔癌発症の分子機構を解明するためには、口腔癌発症に関与している遺伝子の検索、同定を行い、口腔癌の多段階発癌過程を明らかにする必要がある。我々は、転写調節、細胞癌化、分化の過程で重要な機能を担っている転写仲介因子p300に注目し、p300遺伝子のヒト口腔癌発癌過程におけるp300遺伝子の関与について解析を行った。既に我々は、口腔扁平上皮癌1例と子宮頸部癌1例において、p300遺伝子に変異を見いだしており、さらに、それらの細胞では正常なp300が発現していないこと、上皮細胞の増殖を抑制するTGFβに対する反応性を失っていることを明らかにした。また、正常p300遺伝子を導入するとTGFβに対する反応性が回復することから、p300の変異により少なくともTGFβのシグナル伝達系に異常が生じていることを明らかにした。 そこで今年度、p300遺伝子が、癌抑制遺伝子としての機能をもつかどうかを明らかにするために、p300に変異を持つ細胞株に正常型p300を導入し、コロニー形成能が抑制されるかを検討した。その結果、正常型p300は癌細胞のコロニー形成を抑制すること、変異型p300はその抑制能を失っていることがわかった。次に、細胞癌化のモデル実験として良く用いられる正常ラット腎臓の初代培養細胞を用いて、p300遺伝子がアデノウイルスE1A/E1B癌遺伝子の癌化能を抑制するかどうかを調べた。その結果、正常型p300はE1A/E1Bの癌化能を抑えるが、我々の見出した変異p300遺伝子のうち、ブロモドメインと呼ばれる領域を欠損した変異p300は抑制できないことを明らかにした。以上の結果は、p300遺伝子がヒト癌細胞において癌抑制遺伝子としての機能をもつことを示している。最近、ブロモドメインはp300のもつヒストンアセチル化酵素活性(HAT活性)を制御に重要であることが報告されたことから、p300のHAT活性がp300の癌抑制遺伝子の機能に重要であることが示唆される。現在、p300の変異によるHAT活性の変化と癌抑制能との関係を検討中である。
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