研究概要 |
方法: 咀嚼機能障害に関わる咬合因子を解明するために,8名の健常被験者の側方咬合状態を実験的に変化させてブラキシズムを想定した側方咬合位での咬みしめを行わせ下顎の変位量を測定した.側方咬合状態の実験的変化には下顎作業側犬歯,作業側第二大臼歯および平衡側第二大臼歯に対して製作したアクリリック・レジン製のオクルーザル・ストップを用いた.これらの装置を装着することにより犬歯誘導,作業側咬頭干渉,平衡側咬頭干渉,両側性平衡咬合の4つの側方咬合接触状態をシミュレートした.各被験者に対して咬筋並びに側頭筋から導出された表面筋活動電位の加算値を視覚的にフィードバックし,各実験条件間で咬みしめ強さが一定になるようにした.変位については差動変圧器式変位計測装置を用いて左右両側の下顎第一小臼歯近心偶角と第二大臼歯中心小窩の4点についてその上下的変位量を測定した. 結果: 1.咬みしめ時にはいずれの条件においても下顎歯列は挙上される方向に変位した.2.下顎の変位のパターンは咬合条件に強く依存して変化した.つまり,犬歯誘導では平衡側第二大臼歯部が,作業側咬頭干渉では平衡側第1小臼歯部の挙上量が最大となり,平衡側咬頭干渉では作業側第1小臼歯部の挙上量が最大となる傾向が全被験者において観察された.また,両側性平衡咬合では,下顎の4測定点の上方変位量は他の条件に比較して小くなった.したがって,側方咬合接触状態は,下顎の挙上により顎関節部に生じると考えられる圧力にも影響を及ぼしていることが示唆された.
|