研究概要 |
アクリルモノマーは歯冠修復材や接着剤として広く用いられている。しかし、重合収縮によってコンポジットレジンの窩洞への適合性が損なわれたり、硬化体内部に発生する応力によって力学的耐久性や接着耐久性が劣化する。アクリルモノマーの重合収縮改善するために、側鎖にスピロ環をもつメタクリレートおよびそのメチルメタクリレートとの共重合体を合成し、その重合反応を示差走査熱量計(DSC)を用いて検討した。 スピロオルソカーボネートメタクリレート(2-oxo-5ethyl-5-methacryloyloxymethyl-1,3-dioxane:CMA)はtrimethylol-propane,aceton,methacrylic,chloride,ethylchloroformateから合成し、元素分析、IRおよびNMR分析によって確認した。また、CMA/MMA共重合体はAIBNを重合開始剤としてベンゼン溶液中で重合を行った。その結果、CMA(白色結晶物、融点51〜52℃)およびCMA/MMA=35/65(Mn=47000,Mw/Mn=3.14),44/56(Mn=40400,Mw/Mn=1.99),55/45(Mn=46200,Mw/Mn=1.88)の合成が確認された。 [Polymerization] CMAをブチルメタクリレート(BuMA)、エチレングリコールジメタクリレート(1G)、トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)に溶解し、加熱重合(BPO,TBu-K)および可視光線重合(CQ/t-amine)を行った結果、過熱および可視光線重合において、何れも高い重合熱を生じ、生成した重合体のIRスペクトルからもビニール基の重合とスピロカーボネート環の開環が推測された。また、BuMAとの共重合反応において得られた重合体のベンゼンおよびアセトンへの溶解性を調べた結果、膨潤現象は示したが、溶解しなかったことから、ビニール基の重合およびスピロ環に開環よって生ずる架橋ポリマーの生成が確認された。
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