歯科用局所麻酔薬A液(8万倍エピネフリン添加2%リドカインで、防腐剤としてパラアミノ安息香酸メチル、抗酸化剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを加えたカートリッジ製剤)とB液(防腐剤は加えず、抗酸化剤として乾燥亜硫酸ナトリウムのみを加え、他の成分はA液と同じであるカートリッジ製剤)について様々な保管条件における、SEPによる麻酔効果時間、および化学的変成について検討した。A液とB液は通常の歯科診療室で保管する可能性のある場所を考慮して、(1)冷蔵庫内(平均4℃)、(2)室温(平均23±2℃)遮光下、(3)室温蛍光灯下、(4)直射日光下、(5)30℃恒温器内(遮光)の5カ所に保存した。測定は保管前、保管後1、3、6、12カ月におこなった。 A液は遮光下であれば室温で保管しても、12ヶ月後にわずかに麻酔効果時間が短縮するのみであった。しかし、光の影響をうける条件下で保管すると作用時間は経時的に短縮した。この短縮はEpi含有量の減少と一致した。遮光下であっても、30℃に保管した場合麻酔時間の短縮が起こった。ただし、Epi含有量は12ヶ月後でも約85%に保たれており、この短縮にはEpiのracemizationが関与しているかもしれない。B液では室温遮光下で保管しても麻酔効果時間は短縮し、この短縮はEpi含有量の減少と一致してみられた。これらの変化は室温蛍光灯下で保管した場合と大差はなかった。つまり、B液は光よりも温度により強く影響され、麻酔効果時間は直射日光下、および30℃では、さらに短縮した。 以上より、A液を長期間保管する場合には、光の影響を受けにくい条件で、温度は室温(23℃)までは許される。一方、B液の場合に、3カ月以上保管して使用する時には、光に加え温度の影響を全く受けない冷蔵庫に保管すべきであることが判明した。
|