1999 年度実績報告書

ヒトロ腔扁平上皮癌における癌・間質相互作用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号	10470432
研究機関	大阪大学
研究代表者	中澤光博大阪大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70217701)
研究分担者	田村啓史大阪大学, 歯学部・附属病院, 医員岩井聡一大阪大学, 歯学部・附属病院, 医員加藤逸郎大阪大学, 歯学部・附属病院, 助手 (60314390)
キーワード	Squamous cell carcinoma / Tumor-fibroblasts interaction / E-Cadherin / HGF / invasion
研究概要	細胞接着に関しては、IF(高悪性)は培養上清(CM)中にMDCK細胞をscatterさせる因子及び細胞接着を減弱させる因子(TGF-α、TGF-β)を産生していたが、HOSO(低悪性)がそれらを産生していなかった。マウス線維芽細胞(Fb)との共培養(HGF)で、IFでは細胞間の接着が粗になったが、HOSOでは密のままであった。次にFb-CMは、IF及びHOSOの増殖には影響を及ぼさなかったが、IFの増殖に対し、TGF-α、HGFは弱い促進、TGF-βは抑制を示した。次にヒトFbによるHGF産生は、IF及びHOSOともCM濃度依存的に促進され、IL-1受容体アンタゴニストで完全に抑性されたことで、ILはFbによるHGF促進因子としてIL-1を産生していることがわかった。次に、マトリゲルをコートしたトランスウエルを用いたIn vitro Invasion Assayで、TGF-αまたはTGF-β1は、明らかな浸潤活性を示さず、HGFのみが強い浸潤活性を示した。また、両者の浸潤性を、コラーゲンゲル基質中の培養で調べると、非添加、TGF-αまたはTGF-β1添加したものは嚢胞用構造の非浸潤性を示したのに対し、FbのCMまたはHGFを添加したものは細胞間接着がなくなり、浸潤性を示した。すなわち、HGFは、基底膜やコラーゲンへの浸潤を促進する活性を有することがわかった。IFのHGFによる浸潤活性は、HOSOの約4倍であった。このようにIFは、TGF-α、TGF-βによるオートクライン遊走因子及びFbが産生するHGFによるパラクライン遊走浸潤因子により強い浸潤活性を示すのに対し、HOSOはFbが産生するHGFにより弱い浸潤性を示すことが明らかとなった。本研究の結果、臨床的に高悪性のIFは、低悪性のHOSOに比べ、宿主線維芽細胞とより強く相互作用しながら、細胞運動活性、浸潤活性、増殖活性や細胞接着因子などに影響を及ぼす多くの因子を、オートクラインあるいはパラクライン構築で多彩かつ巧みに制御しながら、腫瘍微小環境でより高い浸潤、増殖能を獲得している機序の一端が示された。

研究成果
(5件)

すべてその他

すべて文献書誌 (5件)

[文献書誌] R. Hasina, K. Matsumoto, N. Matsumoto, I. Kato, et al.: "Autocrine and paracrine motility factors and their involvement in invasiveness in a human oral carcinoma cell line"British Jounal of Cancer. 80(11). 1708-1717 (1999)
[文献書誌] S.Iwai, M. Nakazawa, et al.: "Solitary fibrous tumor of the buccal mucosa -Report of a case with immunohistochemical studies"Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 88. 461-465 (1999)
[文献書誌] K. Amino, M. Nakazawa, I. Kato, S. Iwai et al.: "Immunological response in vivo to a tumor rejection antigen"5th Mediterranean Congress of Oral and Maxillofacial Surgery Terrasini, Italy. 159-163 (1999)
[文献書誌] M. Nakazawa, T. Ohnishi, S. Iwai, et al.: "Central acinic cell carcinoma of the mandible report of a case"Int. J. Oral Maxillofacial Surgery. 27. 448-450 (1998)
[文献書誌] 中澤光博、岩井聡一他: "口腔扁平上皮癌再発症例における組織学的悪性度の変化について"頭頚部腫瘍. 24(1). 29-33 (1998)

1999 年度 実績報告書

ヒトロ腔扁平上皮癌における癌・間質相互作用に関する研究

研究代表者

中澤 光博 大阪大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70217701)

研究成果

[文献書誌] R. Hasina, K. Matsumoto, N. Matsumoto, I. Kato, et al.: "Autocrine and paracrine motility factors and their involvement in invasiveness in a human oral carcinoma cell line"British Jounal of Cancer. 80(11). 1708-1717 (1999)

[文献書誌] S.Iwai, M. Nakazawa, et al.: "Solitary fibrous tumor of the buccal mucosa -Report of a case with immunohistochemical studies"Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 88. 461-465 (1999)

[文献書誌] K. Amino, M. Nakazawa, I. Kato, S. Iwai et al.: "Immunological response in vivo to a tumor rejection antigen"5th Mediterranean Congress of Oral and Maxillofacial Surgery Terrasini, Italy. 159-163 (1999)

[文献書誌] M. Nakazawa, T. Ohnishi, S. Iwai, et al.: "Central acinic cell carcinoma of the mandible report of a case"Int. J. Oral Maxillofacial Surgery. 27. 448-450 (1998)

[文献書誌] 中澤 光博、岩井 聡一 他: "口腔扁平上皮癌再発症例における組織学的悪性度の変化について"頭頚部腫瘍. 24(1). 29-33 (1998)

1999 年度実績報告書

中澤光博大阪大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70217701)

[文献書誌] 中澤光博、岩井聡一他: "口腔扁平上皮癌再発症例における組織学的悪性度の変化について"頭頚部腫瘍. 24(1). 29-33 (1998)